伝記 クロード・ドビュッシー
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日本語でこの本を読めるよろこび |
必読書である。笠羽さんが底本とされているクリンクシーク社の「クロード・ドビュッシー:考証による伝記」は絶版になって久しく、古本市場にもなかなか出てこない。それが、今年の5月になって、パリの街角の本屋という本屋に平積みで売られていた。買い求めたことは申すまでもない。クリンクシーク社ではなくファイヤール社から出たこの本は、28ユーロという格安の値段の他に、初版の訂正、また1977年の作品総目録を2001年に著者のルシュール氏が改訂したものも含まれていた。笠羽さんの翻訳はクリンクシークを底本にしているが、ルシュール夫人のサポートで、内容は最新のものと同様になっている。原本も、またこの翻訳も、現時点で最良のものであると断言しても良い。ただし作品目録には別の見解を既に示している研究者もいる。Roy Howatなどがそうだし(ルシュールの目録の最後の曲名はHowatは「燃える炭火に照らされた夕べ」)と書いているがルシュールは「明るく輝いた夕べ」と書いている)、来年にはJames Briscoeが研究ガイドの第二版を出すという。ただしこれは学術的性格が強いので、ルシュールのこの本を読むような楽しさはないだろう。CDで演奏を愉しむと同じように愉しむわけにはいかないが、ドビュッシーの研究をしようとする学生などだけではなく、ドビュッシーの音楽が好きな人にはぜひ読んでいただきたい一冊である。ここを一つの出発点として、日本におけるドビュッシー像の正しい見直しが行われることを期待したい。

