ドビュッシー書簡集1884‐1918
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完全版書簡集はもう夢のことなのだろうか |
書簡集というものは、その人を知る一つの手がかりになる。伝記的な研究をしようという人でなくとも、ドビュッシーという作曲家や作品に興味があるのであれば、この書簡集はお勧めできる。
価格が高いなどというマイナス要因はあるけれどもお勧めするのは、ドビュッシーの書簡の文体というのはなかなか癖のあるフランス語であるので(さらに言えば彼の筆跡は実に読みにくいので、これを活字にするだけでも大事業なのである)、大学の教養課程でフランス語をかじったくらいでは歯がたたないであろうから、原書で読むより日本語を読む方が楽だからなのである。
皆さん!おおいに楽をしようではないか。
この書簡集はドビュッシーが書いた書簡である。普通書簡集というのはそういうものなのだが、作家の全集では、たとえば志賀直哉の全集や堀辰雄の全集では「来簡集」というのもある。ドビュッシーの親友であるピエール・ルイスなどとの間に交わされた「往復書簡集」というのもある。
編者のルシュール氏はもっと多くの書簡を収めた、そして相手からの来簡も含めた完全版書簡集を構想されていたようだ。氏が世を去ってしまったことがくれぐれも残念でならない。ただ、ドニ・エルランなどがルシュールの業績を継承していくかもしれない。その日を私たちは待とうではないか。その日まで退屈をしないで済むくらいには、この書簡集には楽しみを見出すことが容易にできるだろうと思う。

