ブラームス:交響曲全集
頑固一徹な、ぶっきらぼうで辛口のブラームスである。 このブラームス全集は、1982年から85年にかけて、当時70代だったヴァント(1912年生まれ)が北ドイツ放送響音楽監督だった時代に本拠地ハンブルクで録音されたもの。情緒に溺れて音を引きずるようなところは、全4曲通してほとんど皆無。ニコリともせず黙々と仕事に打ち込む職人のようで、愛想のかけらもないが、腕は誰が見ても超一流。その音楽に秘められた熱い想い、曲の構成を見据える眼力の確かさ、要所要所のごつごつと力強く誠実な響きは、聴く者に畏敬の念さえ起こさせる。 第1番は特にその傾向が顕著。たとえば、普通はいかにも苦悩を背負ったように重々しくやる第1楽章序奏は、驚くほど速くそっけない。非常にきびきびとした、個性的なくらいに硬派な演奏だ。しかし構成感の確かさは比類ない。第2番も硬派な演奏だが、曲想のせいも手伝って、厳しい表情のなかに垣間見えるほんのわずかの優しさにホッとさせられる。第3番と第4番は、ともすれば陥りがちな感傷性を拒絶した峻厳な演奏。どこまでも生真面目で、抑え気味な表情だが、内面には火のように熱い心がある。 これらの演奏には、何かに「おもねる」ということがまったくない。これほど剛直な表情に満ちた、甘えを許さないコワモテなブラームスは、現代ではまずお目にかかれないのではないか? 誰にでも笑顔を振りまく愛想のいい音楽ばかりが目立つ昨今、この厳しさについていけない、という人は多いだろう。しかし、この徹底的な愛想のなさは、かえって斬新である。 なお、録音は各楽器の音色がそれぞれはっきり分離し、特に弦の表情など鮮やかで生々しく、大変リアルで聴きやすい。(林田直樹)
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リマスターなので音質も問題なし |
ヴァントと北ドイツ放送交響楽団(NDR)のコンビのブラームスといえば、90年後半に発売された全集(新盤)が有名だが、こちらも見劣りせず素晴らしい内容です。
このCDはヴァントが1982年にNDRの首席指揮者に就任した直後に録音された第1番から、1985年に録音された4番までが収録されています。いずれもスタジオ録音です。
また、CDジャケットのデザインもなかなか気に入っています。鋭い眼光のヴァント。ヴァントファンならずとも、印象に残ることでしょう。

