ブラームス : ピアノ協奏曲 第2番 変ロ長調 作品83
巨匠同士の競演というイヴェントが必ずしも良い結果ばかりをのこすわけではないという事実は衆目の認めるところであるが、このCDではそんな杞憂とはまったく無縁の格調高い高度にアポロ的な精神世界が実現している。
ベームの指揮はあくまでも骨太で雄大、端正な構築をしながら全体として厳格な質素さを忘れない高貴な精神性に満ちており、その緊張感は宗教的というよりは哲学的である。バックハウスのピアニズムは武骨でありながらごつごつしないソフトで温かみのあるスケール感が魅力。
こうしたふたつの悠久の大河の合流は、あたかもティグリス・ユーフラテス両大河が高度な文明を育んだ状況にも似て、現代に音楽という名のもとで、芸術という文化を一段と深化させるにふさわしい名演を生み出したのだ。
ブラームスの「ピアノ付交響曲」第二協奏曲と、モーツァルト最後のピアノ協奏曲というカップリングは、いずれの楽曲もあらたな時代の黎明を予感させている点において象徴的であり、魅力的でもある。(奈良与志雄)
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獅子王の正体 |
ブラームスについては軽く触れるにとどめよう。ここでのバックハウスの技術の衰えは顕著である。同時期に録音されたベートーベンのソナタを聴けばわかる通り、最晩年まで指は回っていたから、この録音の時の彼は特に体調が悪かったのだろう。しかし、幸いなことに、技術の衰えは「音楽」の成立を妨げなかった。特に、彼が人間国宝であった由縁である「世界で唯一の、ベーゼンドルファー・インペリアルを正しく弾ける技術」に触れるには十分な演奏であろう。ベーム/ウィーンについてのコメントは不要だろう。
モーツァルト、この曲は彼の全作品の中でも五本の指に入る名曲であるにも拘らず、なぜか名演に恵まれない不遇な曲である。カーゾン/ブリテン、グルダ/アバドをはじめ、入手できるものをいろいろ聴いてみたが、この曲の高度な要求水準を満たす演奏は見つからなかった。わたくしの知る限り、このバックハウス/ベーム盤が唯一合格点を進呈できる演奏であると思われる。
バックハウスはベートーベン弾きという印象があまりに強いためか、彼のモーツァルト演奏には言及されることがあまりない。しかし、実は、余計な感情移入と表情付けを極度に嫌う、透明感をその特質とするモーツァルトの音楽の弾き手としては、バックハウスは最適なのである。どうも、彼に進呈された「鍵盤上の獅子王」という異名が大きな先入観となって邪魔をしている気がしてならない。バックハウスの長所は、決してその正確無比のテクニックではなく、ベーゼンドルファーからあの芳醇な美音を紡ぎ出す能力と、恣意に流れない簡潔な解釈(後者の意味ではバイオリンのハイフェッツに通じるところがある)にあるからである。
なお、一般にはあまり知られていないブラームスの名演として、クラウディオ・アラウとジュリーニによる演奏を併せてお勧めしておきたい。
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ブラームス ピアノ協奏曲2番 |
この演奏を初めて聴いた時、何というスケールの大きく、奥深い演奏だろうかと感動しました。私はこの曲が非常に好きでして、高校生の時からいろいろな演奏を聴いてきました。しかし、ベームとバックハウスの演奏ほど感動したことはありません。ベームの奥深く流暢に流れていく指揮ぶりに、バックハウスのがっちりとかまえた逞しく、しっかりとしたピアノは、ブラームスという作曲家の本当の深さと大きさを表出しています。この演奏ほど壮大で充実した演奏にはなかなか出会えないと思います。是非ともお聴きください。
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ピアノ協奏曲の最高峰 |
ブラームスのピアノ協奏曲第2番もモーツァルトのピアノ協奏曲第27番も非常に美しい旋律に溢れた最高のピアノ協奏曲です。このバックハウスの演奏はこの2曲の決定盤といってもいいほどすばらしい演奏です。とくにブラームスの方は名盤といわれる演奏の中でも一番すばらしいと感じています。
私的ベスト5に入るほどの超お気に入りの1枚です
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バックハウスの昇天を聴き、至純のモーツァルトを聴く |
当ディスクのメインはなんといってもモーツァルトです。
確かに、ブラームスも素晴らしい。バックハウス最晩年の姿を伝えた、まさに「聖者昇天の図」ともいうべき神々しさです。ただバックハウスの技術的な衰えが大きく影響しています。確かに常に泰然としたテンポのピアノが劇的な効果を生む場面もあるのですが、常に打鍵のインパクトの弱さがつきまとうこの演奏では、大曲を聞き通すには一般的には辛いと感じます。ですから、このブラームスの演奏はどうしてもバックハウス最晩年への思い入れをプラスして聴く事になってしまうのです。
だが一方のモーツァルトは、演奏者への個人的な思い入れなど吹き飛ばしてしまう至純の大芸術です。モーツァルトの演奏とはいかにあるべきかの最高の規範であり、まさに理想的イデアの具現としかいいようがありません。この演奏の前ではいかなる評言も無駄でありましょう。
追伸:姑息な分売を考えずこの2大名演をひとつのディスクに収めて最高のリマスタリングで提供してくれる発売元レーベルにも敬意を表します。
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輪島v.s.北の湖 |
ブラームスピアノ協奏曲はよくいわれるように、交響曲的スタイルにピアノのパートが挟まるような構成であり、曲自体が風格あるものだと思っている。そこでこの2番の演奏。たとえると千秋楽の横綱どうしのがっぷり四つの一番である。べーム盤はブラームスの交響曲でもその風格、重厚感に聴く度圧倒されてしまうが、同様なアンサンブルがここでも聴かれる。そしてやっと出てきたピアノのパート、立ち会いやや遅れたが、そんなことはまるで関心がない風の大横綱の風情で、ゆったりしたテンポで、かつ張り詰めた緊張感ある楽想を進めて行く。まさに大横綱どうしの、一歩の引かない、力勝負。最初のバックハウスのソロから、どこまで緊張がつづくのか、と思い聴き続けると、ついにその緊張感は最後まで途切れる!ことなく、最終楽章フィナーレとなるのでした。
個人的には、ブラームスのやや甘いところさえも超越した、ブラームス演奏の最高の頂点にたつ演奏だと思っています

